障害への理解 「まさつと対話」で築く

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世の中で議論を呼んでいる話題について、ゲストに意見を聞く「opinions」。今回の話題は「障害者への差別・偏見は?」。先天性緑内障のため、12歳で失明した全盲の弁護士・大胡田誠氏に聞く。
内閣府が行った世論調査によると、「世の中には障害のある人に対して、障害を理由とする差別や偏見があるか」との問いに、83.9%の人が「あると思う」と答えた。
――大胡田さんに、この話題についてのご意見をいただきます。フリップをお願いします。
「まさつと対話」。実は、私は海外旅行が大好きで、先日グアムに行ったんですね。そこでスカイダイビングをやったんですよ。
日本だと、障害者がやろうと思うと「危ないから」、「安全が保証できないから」と言われてできないんですけれども、アメリカという国は分かりやすい国で、金さえ出せば障害者もお客様という感じで、私もスカイダイビングを楽しむことができました。危険な遊びを楽しむ自由があるんだなと思ったんですね。
一方で、先日、あるお父さんからこんな法律相談を受けました。このお父さんの娘さんはダウン症の障害があったんですが、遊園地でジェットコースターに乗ろうとしたら、「障害者はジェットコースターに乗れない」と言って乗せてくれなかったとのことです。
この子はジェットコースターに乗るのがとても楽しみで遊園地に行ったのだけれども、乗せてくれなかったということで、とてもつらい思いをしたそうなんですね。アメリカではスカイダイビングもできるんだけれども、日本ではジェットコースターに乗れないというんです。
このように世の中の差別というのは、意図的に障害者を区別してやろうとか、困らせてやろうというよりは、安全とか迷惑とか、そのような従来の制度や考え方によって無意識のうちに行われてしまっていることが多いように思っています。
こういった状況を変えるには、「まさつと対話」が大事だと思っています。これまで、日本は障害者と健常者が接点を持つことがほとんどなかったんですね。だから、お互いがお互いのことをあまり知らない。そこで、まずは接点を持って摩擦を起こす。最初は摩擦があるかもしれませんが、摩擦で終わるのではなく、ちゃんと対話をしていく。そして、お互いがお互いのことを知っていくことが大切です。
私も大学生になったばかりの頃、こんな体験をしました。授業が始まってしばらくすると、点字を使ってノートをとる音がうるさいということで、教授から「他の学生が座っていない端の席に移りなさい」と言われてしまったんですね。
思わず涙があふれたんですが、次の瞬間、いろんな学生が「大胡田くんにも好きなところで授業を受ける権利があるんだ」、「うるさいと思うならその人が動けばいいじゃないか」と、大議論になりました。その結果、障害に対する理解がお互い深まったんです。
これは「まさつと対話」が大事だということを教えてくれました。障害者も勇気を持っていろんな所に出て行く。そして、いろんなことに挑戦する。最初は摩擦があるかもしれませんが、そこで対話を通じてお互いのことを知っていく。この個々の対話が、差別をなくしていくことにつながるのではないかと思っています。
■大胡田誠氏プロフィル
全盲の弁護士。先天性緑内障で、12歳で失明するも、弁護士を目指して慶応大学に進学。5回目のチャレンジで司法試験に合格した。現在は一般の民事案件などのほか、障害者の人権問題にも精力的に取り組んでいる。