北の強硬派幹部が“異例の謝罪”…狙いは?

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世の中で議論を呼んでいる話題について意見を聞く「opinions」。今回の話題は「北朝鮮の強面(こわもて)幹部が異例の謝罪 その意味は?」。日本テレビ国際部・玄昶日デスクに聞く。
今月1日、北朝鮮を訪れていた韓国芸術団が平壌で公演を行った際、同行した韓国の記者団が公演会場に入れないトラブルがあった。この翌日、金正恩委員長の側近の1人である朝鮮労働党の金英哲副委員長は「自由な撮影をさせなかったのは間違ったことだ」と謝罪。北朝鮮の高官が、取材をめぐり韓国側に謝罪するのは異例のことだ。
――この金英哲副委員長は「強面の幹部」ということですが、そもそもどういう人物なのでしょうか。
金英哲氏というのは、軍部強硬派の代表的な人物の1人と見られていますから、金英哲氏が韓国メディアに頭を下げるというのは非常に驚きをもって受け止めたニュースでした。
金英哲氏は、トラブルがあった翌日に韓国の記者らと懇談しました。そこで気になる発言があったんですが、冒頭、「韓国側で哨戒艦沈没事件の主犯と言われる金英哲です」という風に自ら述べているんですね。
哨戒艦沈没事件は、2010年に韓国の哨戒艦が沈没した事件なんですが、韓国ではこの事件の黒幕に、金英哲氏がいるんじゃないかという見方が根強くあります。そうしたことを念頭に「私が主犯といわれる~」と述べたのは、受けたかどうかは別として、ブラックジョークだと言えると思います。
これとは別に、2013年3月、米韓合同軍事演習に激しく反発した北朝鮮軍が「朝鮮戦争の休戦協定を白紙化する」との声明を出したのですが、これを読み上げたのが金英哲氏でした。
こうしたことから「強硬派」のイメージが強いんですが、その彼が謝罪したというのは、私たちからすると、「へー」というニュースでしたね。
――韓国側や記者のみなさんもびっくりされたかもしれないんですけど…
「びっくり」だと思いますね。
――ではなぜ、その強面の幹部が“異例の謝罪”に踏み切ったのでしょうか。
フリップなんですが――「韓国をがっちり」と書きました。
北朝鮮は今年に入って、韓国へ対話を呼びかけまして、その後は、平昌オリンピック参加や南北首脳会談の開催など、トントン拍子に話が進んでいまして、韓国との関係改善を力強く進めているという現状があります。こうした流れの中で、韓国との対話ムードに水を差したくないということで、異例の謝罪を行ったとみられます。
そして、来月には北朝鮮は、アメリカとの首脳会談の開催が見込まれています。トランプ大統領がどう出るか、北朝鮮にとっては重要な会談ですが、なかなか読みづらいという中で、韓国をがっちり自分の側に寄せておきたいという流れの中で、今回の謝罪があったんじゃないかなと思われます。
――ここ最近、異例なことが多いですし、まだまだ何か起きる可能性があるなと。
しばらく忙しい状況が、我々記者も続くかなと思います。
■玄昶日プロフィル
日本テレビ国際部デスク。検察取材や沖縄支局を経て、ソウル支局長時代は金正恩委員長の初となる肉声演説を平壌で取材。現在は、主に北朝鮮をめぐり変動する国際情勢の取材の指揮をとっている。