「第3の耳」を持つ現代美術家ステラークは、テクノロジーの時代に「生身の身体は時代遅れ」と考えた【動画ライター】

視聴回数640,514

※ 視聴回数は1日1回更新されます。
朝日新聞社

bouncy / バウンシー

マイクロチップ埋め込みや人間のサイボーグ化、フックを貫通して吊り下げるボディサスペンションなど、最先端の身体改造カルチャーを紹介している当連載。今回は、自らの腕に「第3の耳」を埋め込んでいる現代アートのパフォーマー、ステラークについて解説する。
ステラークの左腕には「第3の耳」がある。
 1946年オーストラリア生まれのステラークは、テクノロジーの時代に「生身の身体は時代遅れ」と考え、1970年代、技術大国として世界をリードしていた日本に長期滞在していた頃から身体改造カルチャーを先取りするような過激なパフォーマンスを展開してきた。
 1995年、私は東京で彼のインタビューを行っていたが、それから約20年後の2017年、ドイツ・ベルリンのボディサスペンション国際会議にて、彼との再開を果たした。
 この会議は、当連載の第1回目で紹介したサスペンションの世界大会「サスコン」を主催しているノルウェーチームが開催したものである。そこでは、ステラークの最新のレクチャーと彼のプロデュースによるサスペンション・パフォーマンスを堪能することができた。
 そんな身体改造カルチャーの現場からのレポートをお送りする。
ボディハッキングの先駆者としてのステラーク
 2006年、ステラークは自分の耳を型取った素材を左腕に埋め込んで大きな話題となった。彼はそこにさらにマイクを仕込んでインターネットを介し、「第3の耳」で聞いた音を世界配信しようとしている。
 「第3の耳」のアイディアは90年代に発表されていたが、ゼロ年代になってやっと実現した。当初、バイオテクノロジーで彼の耳の細胞そのものを培養して埋め込もうとしていたがうまくいかなかったという。
 80年代に発表した「第3の手」は腹筋などの動きを電気信号に変換し、ロボットハンドを自在に動かすというもので、テクノロジーによって、人間の機能を拡張してみせた。