音から広がるイマジネーション。視覚障害者の情報管理術から着想を得たアプリ「moom」「heart」

視聴回数699,366

※ 視聴回数は1日1回更新されます。
朝日新聞社

bouncy / バウンシー

世界最大規模のテクノロジー&カルチャーイベント「SXSW 2021」で発表された、情報記憶アプリ「moom」と音声SNS 「heart」。
私たちはあらゆる情報を主に視覚に頼って把握・管理しているが、「moom」と「heart」は、人間の音や空間に対する感覚に焦点を当てた画期的なアプリだ。
情報を擬似空間に配置して管理する「moom」
情報記憶アプリ「moom」は、アプリを通して仮想の「メモ空間」をつくり、部屋にモノを配置する感覚で情報を管理できるツール。
開発チームメンバーの1人で視覚障害を持つ、松村道生氏の記憶法から着想を得て開発された。
情報をメモして残すことができない松村氏は、例えば会議では頭の中にまっさらなキャンパスを作り、ある人の発言を左上に置いて、近い発言はその隣にという具合に空間的に配置して記憶する。
日常生活でも、例えばおにぎりの具を選ぶとき、梅と明太子はすぐ近く、おかかは右、炒飯は後ろという具合に配置し、今日は梅と明太子のゾーン、といった考え方をするという。
「moom」はこの脳内の擬似空間をアプリで再現したもの。例えばさまざまな「名言」を記録しておきたいとき、「moom」は入力時の場所・時間・感情・天候などに基づいて、その名言を仮想空間上に自動で配置する。
仮想空間上の名言の位置にデバイスをあてるとその名言が読み上げられ、視覚よりも音と空間を通して情報を認識する。まるで自分の部屋にモノを置くかのように、情報を感覚的に管理できるのが面白い。
耳で聞いて想像するSNS「heart」
「heart」は、何気ない日常を気軽にシェアできるSNSアプリ。これだけだと従来のSNSサービスと同じだが、最大の特徴は写真や動画ではなく音をシェアすること。
普段視覚に頼って生活している私たちは、音への感覚が鈍りがちだ。しかし目を閉じて聴覚に集中してみると、実にバラエティ豊かな音に囲まれていることがわかる。
風の音、雨の音、誰かが歩いている音。例えば包丁を叩く音一つとっても、それはレストランの厨房かもしれないし、家族が料理を作ってくれているアパートの部屋かもしれない。情報をあえて音に絞ることで想像力が掻き立てられる。
「heart」は、こういった日常の音のシェアを通して、相手が今どこにいてどんなことを感じているのか、自由に想像する楽しみを与えてくれる。「いいね」も音で表現され、投稿の音と合わさってより素敵な音を奏でていくしくみだ。
・ ・ ・
写真や動画が溢れ、誰かが見せたい情報を受け取るだけになりがちな現代だからこそ、自分のイマジネーションを大切にして情報と向き合ってみては?
moom, heart
veernca LLC.