俳優・武田真治がメモした「オリジナル語録」とは_ 心を導く書籍「上には上がいる。中には自分しかいない。」

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朝日新聞社

bouncy / バウンシー

2021年も残すは12月のみ。筆者は時間の経過の早さに愕然とすると共に正直、焦る。今年は新型コロナウイルスに日常生活が翻弄され、鬱々と過ごす時間が多かった。どんな時もメンタルをしっかり保つことを来年の課題としたい。
静かに目を閉じて自分と向き合う時間が時に必要となるだろう。同時に人生の先輩たちに頼ってみるのも有効だ。手に取るに値する1冊の本と出会った。
「上には上がいる。中には自分しかいない。」(幻冬舎)だ。
肉体や筋トレ本でなく
著者は、俳優・ミュージシャンとして活躍中の武田真治さん(48)。近年はNHK「みんなで筋肉体操」に出演し、見事な肉体美を披露している。無駄なく引き締まった体は実に見事だ。50歳が近いアラフィフだとは到底思えない。
その武田さんは、同じく幻冬舎から7年前に本を出している。タイトルは「優雅な肉体が最高の復讐である。」。「美しい肉体の秘密」を「はじめて明かす」内容とAmazonでは紹介されている。
今回の「上には~」は、以前の肉体や筋トレ本ではなく言葉の本。「はじめに」で、以下の文章が出てくる。
「人生に一番迷っていた」「20年ほど前に、弱い己を律し、僕自身を支えていた、僕自身から出た『言葉』をお伝えしたい」
PART1は「オリジナル語録」
「はじめに」に続くのは、「PART1 これらのことを書かずにいられなかった」。武田さんが、メモ類に記したいわゆる「オリジナル語録」とその解説で構成される。
例えば書籍名につながる言葉は、18ページにある。
「上には上がいる。
でも中にはオレしかいない。
自分と向き合う。」
そして左下に、解説がある。
「競争すると疲れる。共存しようとするなら、すべてが自分にとってもエネルギーになる」などと続く。
借り物でなく力強い
武田さんは45歳の筆者の3歳年上で、ほぼ同世代。学生時代からテレビでずっと拝見してきたような記憶がある。はたから見ている分には順風満帆そうな人生だ。
しかし、ご本人の受け止めは必ずしもそうではない。これまでの歩みを、「恵まれた方だと分かっている」と客観視している。それでも、心身共に不調の時期もあり、実際20代半ばに顎関節症を患っていた。決して一本調子ではない。
そんな沈んだ時期があるからこそ、手探りで「言葉」を探すようになった。その言葉は借り物でなく、自ら見つけている。だから、正直で力強い。
人となりが一致
こうした言葉を生み出した武田さんがもし残念な人だったら、言葉だけが空回りする。書籍の内容が良くても、bouncyで紹介しにくい。そうではなく、言葉と人となりが一致しているエピソードを三つ紹介する。
インタビューは11月中旬、所属先のホリプロ(目黒区)で実施した。
この日は快晴で窓から太陽光が差し込み、インタビュールームが少し暑くなった。エアコンを入れて、武田さんを待っていた。
室内に入ってきた武田さんは、その音に気付き「エアコン切っていいよ」。クリアな音声を拾うために、筆者から「空調オフでいいですか?」と聞くつもりでいた。先に言ってもらえた気遣いが嬉しかった。
インタビューが開始してまもなく、通路から雑音が聞こえてきた。インタビュアーの筆者もちょっと気になる大きさだ。内心「むむっ」となったが、筆者は動きにくい。
すると気付いた武田さんが、スタッフを通して外の人たちに控えるように言ってくれた。
生メモの整理まで
最後がインタビュー終了後だ。武田さんが実際に書いたメモを机の上にならべて、撮影した。書籍の原点となった「生メモ」と武田さんの映像が欲しかった。
無時に終えると、メモ類をビニール袋に戻す必要があった。アシスタントのbouncy学生インターン宮崎華帆さんが整理しようとする。すると「いいよ、いいよ」。武田さん自らメモ類を集め始めた。
言葉だけ飾るのには限界がある。やはり、きちんとした人からきちんとした言葉が生まれる。武田さんは、それを実践していると感じた。