人間の倫理観に限界はあるのか?ヒトのゲノムをつくることの意味とは【眠れなくなるほど面白い 図解 生命科学の話】

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 「ヒトゲノム計画」によって、ヒトのDNAのすべての塩基配列は、すでに解読されています。個人間の配列のわずかな違いも明らかになりつつあり、その違いに関係する病気や体質などもわかりました。そうなると次は、いよいよ「書く」(つくる)番です。病気に関係するものを含まない配列に書き換えれば、病気にかかりにくいゲノムをもつヒトをつくることができます。つまり、リスクのない、希望するヒトゲノムの人工合成が可能な時代がやって来たということです。合成したヒトゲノムから人工細胞をつくって、移植専用臓器や新薬の開発につなげる。そんな研究も始まっています。
 ただ、ここで考えておかなければならないことが、ヒトゲノムの合成は、どこまで許されるかという問題です。病気にかかりにくいゲノムならまだしも、超スピードでどこまで走っても疲れない運動能力抜群のゲノム、どんな天才よりもはるかにかしこいゲノム、ほかの人より何倍も長生きできるゲノム。そんなヒトゲノムをつくってもいいのでしょうか?確かに、技術的には将来的に可能になるでしょう。でも、だからといって実行すると、いろいろな問題が出てきそうです。研究者も私たちも、ともによく考え、どうするべきかを議論していく必要があります。
出典『眠れなくなるほど面白い 図解 生命科学の話』
著:高橋祥子