難病の治療も生命科学で可能になる?【眠れなくなるほど面白い 図解 生命科学の話】

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 難病の多くは遺伝性疾患で、原因がわからないものや、決定的な治療法が確立していないものが少なくありません。生命科学はこうした分野にも分け入り、数々の成果を上げています。2023年には、「クリスパーCas9」のゲノム編集技術を使って、「鎌状赤血球貧血症」と「β サラセミア」の治療方法が開発され、話題になりました。どちらも血液をつくる造血幹細胞の遺伝子異常によるもので、正常な赤血球がつくれないために、重度の貧血を起こしたり血管が詰まったりする厄介な病気です。これまでは、他人の正常な造血幹細胞を移植する治療が行われてきましたが、ドナー不足や拒絶反応などの問題が多くありました。
 ゲノム編集による新しい治療法は、患者自身の造血幹細胞を体内から取り出し、ゲノム編集で問題の遺伝子を正常な赤血球をつくれるように改変し、患者の体内に戻すという方法です。その後の臨床試験では、痛みがなくなった、輸血量が大幅に減少した、深刻な副作用がほとんどなかったといった報告が上がっています。
 ゲノム編集を使った治療の研究は、すでに、がんや白血病、家族性高コレステロール血症などで進められています。今後さらに、パーキンソン病や筋萎縮性側索硬化症、超早期老化症など、原因不明の難病への応用が期待されます。
出典『眠れなくなるほど面白い 図解 生命科学の話』
著:高橋祥子