第164回『直木賞』加藤シゲアキ受賞ならず 西條奈加氏の『心淋し川』が受賞

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日本文学振興会は20日、『第164回芥川龍之介賞・直木三十五賞』の選考会を東京・築地「新喜楽」で開き、直木賞に西條奈加氏(56)の『心淋(うらさび)し川』が決定。『オルタネート』で初めての候補に入っていた、人気グループ・NEWSの加藤シゲアキ(33)は、惜しくも受賞を逃した。
 北方謙三選考委員は講評で、最初の投票で加藤の作品含む4作が残り、決選投票で『心淋し川』が選ばれたと説明。加藤の作品を「個人的には非常に推した」と明かした。また「私は青春小説として非常によく書けてると思いました。これを強く推す委員も他にもいました」とし、「決選投票になる前に、加藤シゲアキに直木賞を受賞させようというような機運を作ろうと意思が2、3あったが、やはりこれは『もう1作待とう』となった。とっても惜しかったと思います」と語った。
 個人的な意見として、「加藤シゲアキの作風で何が足りなかったと言うと、明確に指摘できるような欠点はない」と解説。「物語として破綻がどこにもない、でも破綻がどこにもないというのは本当にいいことか」と触れ、「加藤さんは小説の最後にこだわるのではなく、どこかの表現をばっと突き抜けて深いところにボーンと入っていくような小説を書いていただきたい。私はそう切望しました」と本音を吐露した。
 また、芥川賞に選出された宇佐見りん氏(21)、直木賞の西條奈加氏(56)が出席した。
 今回の『第164回芥川賞・直木賞』は、芥川賞は宇佐見氏の『推し、燃ゆ』(文藝秋季号)が受賞。一方、直木賞は西條氏の『心淋し川』(集英社)が選出された。
 西條氏は受賞した感想を問われ、「今はただ緊張してます、受賞の連絡を受けるまではのんきに構えていた。電話をいただいてから、急に汗が出たり、声が上ずったりしている状態です」と、まだ受賞の現実味がないと語った。「戸惑いのほうが大きくて、もちろんうれしいし、光栄ではあるんですけど、幸せ感というよりはこのあと、どうしたらいいか不安の方が大きい。幸不幸の量としては丁度同じくらいかなと思っています」と心境を明かした。
 講評で欠点がない所が欠点と評価されたことについて、「欠点がない所が欠点というのはある意味、最大の欠点かなと思います」と説明。「小説はいろんな意味で尖っている方が良いんだろうなと思うんですけど、私はよくバランスがいいと評価される。私の長所でもあり、短所でもあると思う。欠点がないと言われることは非常に納得がいきます。決して喜んではいいことばかりではないんですけど、自分の中でストンと落ちるものがありました」と、講評の言葉を受け止めた。
 本作が受賞したことについて、「ある意味、地味な作品といいますか、もっと滑稽なものも書く。私にしてはシリアスで結構地味なもの。それが評価されたのは若干驚きもあったんですが、うれしいものもありました」と喜んだ。
 最後に「今こういう大変な状況になって、私の生活そのものは家で原稿を執筆するだけですので、それほど変わらないんですけど、読者の存在をより身近に、前よりも意識して考えるようになった。読者に読んでもらって初めて、小説というのは完成するものではないかなという意識が非常に強くなりました。この場を借りて、読者の皆さまにお礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました」と感謝した。
 西條氏は1964年11月9日北海道中川郡池田町生まれ。東京英語専門学校卒。2005年『金春屋ゴメス』で第17回日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。11年に『涅槃の雪』で第18回中山義秀文学賞受賞。14年に『まるまるの毬(いが)』で第36回吉川英治文学新人賞を受賞した。