日本テレビ政治部・小栗泉部長は、入社から報道一筋。社会部では脳死移植問題や皇太子さまのご結婚を報道した。政治部では宮沢政権や細川連立政権などを取材したほか、多くの選挙報道も担当。政治部長として政治の背景に至るまで、きめ細かく分析・解説している。
10月22日に行われる衆議院選挙について、様々な取材や情勢分析をもとに小栗部長が3つのポイントを解説する。
■希望の党“苦戦”のワケ
日本テレビと読売新聞が行った情勢調査によると、希望の党は公示前の57議席を確保できるかどうか微妙な情勢となっている。希望の党が伸び悩んでいるのはなぜなのだろうか。
多くの人がターニングポイントとして挙げるのが、小池代表が民進党から合流を希望する一部の人に対して「排除する」と発言した瞬間だ。
それまで小池代表は、都議会自民党のドンなど権力を持つ側に斬り込むという対決構図をうまく作って自分をアピールしてきたが、あの発言で自らが権力側にまわった。それが失速の原因だというわけだ。
もし仮に、東京の選挙区で希望の党の候補者が1人も当選しないということになれば、都民ファーストの都議にとっても頼るべき国会議員がいないという事になる。小池代表としては、国政に進むも都政に戻るも茨の道と言わざるを得ない。
■民進党分裂 得をした人は?
民進党は今回、分裂選挙となってしまったが、結局、誰が得をしたのだろうか。
今の情勢調査などからいえば、立憲民主党と言っていい。小池代表に「排除された」という意味で、判官びいきの日本人には受け入れられやすいという面もあるのかもしれない。また、小池代表の人気に飛びついて希望の党に合流するのではなく、「筋を通した」というイメージがあることも強みのひとつだ。
ただ、より広い視野から見ると、今回、新たに希望の党、立憲民主党ができたことで、維新や共産、社民も含めた三つどもえの形になり、それによって安倍政権に対する批判票が分散する形になった。それが結果的に安倍首相、自民党に有利になって“漁夫の利”を得ているという構図になっている。これが現状と言っていい。
■このまま自民党が勝利?
自民党は、小選挙区・比例代表ともに優位に戦いを進めていて、単独で衆議院の過半数233議席を大きく上回る勢いとなっている。自民党の勢いは止まらないのか。
選挙は最後の最後まで分からない。「アンダードッグ効果」=「負け犬効果」というのを聞いたことがあるだろうか。事前の情勢調査などでよく言われるアナウンス効果のひとつだが、リードしている側を大勝させないようにとバランスをとって、「不利とされている側の人に投票する」という人も意外と多い。
この選挙戦の期間中に、例えば北朝鮮のミサイル対応などで1つでも安倍政権が失敗したとすると、共産党や社民党などの野党各党はこの時期での解散を非常に批判しているので、勢いづくということがあるだろう。
それだけに安倍首相は、地方への選挙応援も泊まりがけでは行かず、必ず東京に戻る予定を組むなど、隙を作らないようにと気を配りながらの選挙戦となっている。