不確かだけれども存在している「何か」を伝えるコンテンポラリーアート「虚実の距離」

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朝日新聞社

bouncy / バウンシー

こちらは、2020年の高松コンテンポラリーアート・アニュアル vol.09「時どきどき想像」(高松市美術館)に出展されたアート作品「虚実の距離」。
床には様々な形状の食器が並び、天井からは米や大豆の入った透明の管がぶら下がっている。そして両者の間を、半透明の円柱型の袋が、空気で膨らんだりしぼんだりしながらゆっくりと上下し続けている。
思わず足を止めて見入ってしまう不思議な空気感の作品だ。
私たちの社会に不確かだけれども存在している「何か」
袋が膨らんでいるときには見えない食器が、しぼんでいくことで意味深に浮かび上がる。
食器や食物という身近な存在を通して、私たちの生活の中にある「見えるもの」と「見えないもの」、さらには「見ようとしていないもの」や「見えているつもりになっているもの」、そして作品名にもある「虚」と「実」を暗示しているように感じる。
また、2つの集合体の間を行き来する透明な袋は、両者をつなげたり、逆に引き離したりしているようにも見える。絶え間なく動く様子から時の流れを連想したり、袋ごとに異なる動きの周期から社会の多様性を感じたりする人もいるだろう。
作者の大西康明氏は次のように語る。
「これら作品の中に起こる事象や関係性は我々が生きているこの世界や社会の在り方を示唆しています。そして、我々の知覚に働きかけながらこれまでとは違った位置からそれらを見つめる機会を作品として提示します。」
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私たちの社会に、不確かだけれども存在している「何か」。世界が不安に包まれている今こそ、アート作品を通して新たな視点で向き合ってみては?