震災から10年「福島」ではなく「私たち」の未来と語るワケ。除去土壌について一緒に考えてみませんか?

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朝日新聞社

bouncy / バウンシー

十年前の、あの日。あなたはどこで、何をしていただろか。日本で暮らす人であれば、忘れられない出来事として、あの日の事を記憶している人も多いのではないだろうか。
東日本大震災及び、東京電力福島第一原発の事故から10年。福島は復興の歩みを止めていない。しかし、解決しなければならない問題や課題が、文字通り未だに山積みなのが現状だ。今回は、そんな課題のうちの一つ、「除去土壌」について、紹介させていただきたい。
除去土壌に関する法律をご存じだろうか。
「除去土壌等を30年以内に福島県外で最終処分すること」
国が2011年に約束し、2014年には国の責務として法律にも定められた。
福島の深刻な環境被害と、それによる住民の重すぎる負担を考慮したものだ。最終処分を県外としたことで、この除去土壌の問題は国内全体の問題となった。
しかし、国が2020年に行ったWeb調査によると、「除去土壌等の最終処分」について、「知らない」と答えた人が福島県外で約8割、福島県内でも約5割に及んだ。
環境省は、除去土壌について周知すべく「福島、その先の環境へ。」対話フォーラムを開催した。小泉環境相らが、除染で発生した除去土壌等の再生利用、県外最終処分に向けて、福島だけの問題でないことをアピールした。
「除去土壌」とは、放射能で傷ついた土地を回復させるためにはぎ取った土のことだ。
東京電力福島第一原発の事故により放出された放射性物質。福島県内の多くの地域で生活空間における放射線量を下げるため「除染」が行われた。
国や市町村による除染作業は2012年1月に始まった。これまでの除染作業は福島県内だけで、40万軒以上の住宅、500平方キロメートルを超える農地や森林に及んでいる。この除染で剝ぎ取った土は、膨大な量の「除去土壌」となり、今なお福島の土地にとどまっている。
除染で剥ぎ取られた除去土壌等は、仮置き場を経て、事故の被害が最も深刻であった大熊町、双葉町に設置された「中間貯蔵施設」に運び込まれる。福島県外で除去土壌等を最終処分するまでの間、30年という期限で安全に集中管理する施設が、中間貯蔵施設だ。
貯蔵される除去土壌等は量にして約1,400万立方メートル(帰還困難区域のものを除く)。10トンダンプトラックで約200万台分に及ぶと言う。2021年2月時点で、そのおよそ4分の3が施設に運び込まれた。
中間貯蔵施設への搬入が開始されたのは、2015年3月。そこから30年後が、「福島県外での最終処分」の期限だ。
県外最終処分に向けて、まず最終処分量を低減することが鍵となる。そのために、中間貯蔵施設に保管される大量の除去土壌等をいかにして効率的に減容処理するか、また、その結果生じる本来貴重な資源である放射能濃度の低い土壌等を再生資材として利用可能とする技術的・制度的・社会的条件をいかに整えるかが課題となっている。
環境省では、地元のニーズに応え、産業創生への支援、脱炭素まちづくりへの支援、ふくしまグリーン復興への支援、地域活性化への支援の4つの環境政策分野で貢献を表明。環境省の得意分野において、地域の強みを創造・再発見する未来志向の取組を力強く進めていくとしている。
2021年2月、環境省は「未来志向の新たな環境施策の推進~ふくしま、次の10年へ」という重点施策を掲げた。福島県内では多くの方々が、環境保全や再生、未来への継承に取り組んでいるが、全国的に見ても誇らしい先進的・ユニークな活動も、広い周知には至っていないのが現実だ。
そのため、環境省は特筆すべき取り組みに対して「FUKUSHIMA NEXT」表彰制度を設けた。その広報などを通して、新しい福島を目指す人々の姿、その熱意、元気に前を向く福島を広く深く知ってもらいたいという。
十年前、私たちを襲った大震災後、あのすさまじい惨状の映像とともに海外メディアでたびたび話題になったことがある。大惨事の混乱の中にもかかわらず、日本人達が長蛇の列の中、暴動も起こさず、互いに協力し合うモラルの高さが評価されていた。
非常時にこそ、その人間の本性というものが浮き彫りになるものだ。日本人には「当たり前」の事として互いを思いやり、助け合える国民性がある。その象徴的な出来事であったのではないだろうか。
あの時の気持ちを、いま一度思い出してほしい。東日本大震災は、まだ現在進行形で続いている。復興が完全に終わるまで、過去の出来事、とは言えないのではないだろうか。そして福島の復興問題は、福島だけの問題ではなく、日本に暮らす人々がそれぞれ考え、向き合い、解決していくべき課題なのではないだろうか。
福島、その先の環境へ。
環境省『福島、その先の環境へ。』