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※ 視聴回数は1日1回更新されます。御年84歳にして、イラストレーターとして活躍している田村セツコさん。1960年代には『りぼん』や『なかよし』など数々の少女漫画雑誌の表紙などを担当。1970年代には自身のイラストが描かれた文具や小物が”セツコ・グッズ”と呼ばれるほど人気を博した。
そんな田村さんは2022年4月にエッセイ本『人生はごちそう』(あさ出版)を出版した。人生を前向きに生きるためのコツが詰まっており、ポップな文体ながら数々の経験や教養に裏付けされた言葉はインパクトがある。
人生の大先輩である84歳の田村さんの書籍と取材から感じた「人生を前向きに生きるコツ」を、23歳の筆者が綴っていく。
人生に無駄なものなんてない
前向きに生きるコツとして最初に感じたものは、「何事もプラスに捉える考え方」だ。この考え方は単に自らに起こる不幸すらもプラスに捉えるだけでなく、物や人も含めて全てが自分のためになるというスタンスである。
書籍の前書きも「自分の身に起こることは、全部、素晴らしいことなの。」という一文から始まる。インタビューでも「人生を前向きに生きるコツは?」という質問に対して、次のように答えた。
「身の回りで無駄なものなんてない。だから、周りのものがすべて応援してくれている気がする。それで自然と前向きになれる」
取材中のさりげない会話でも、その哲学を感じた。仕事場を取材していた時、田村さんは失礼ながら筆者から見たら完全にゴミにしか見えない、20cmくらいの三角形の段ボールの切れ端を嬉々として書籍編集者に見せていた。それを田村さんは「これを装飾したらかわいくなるかなと思って持ってきちゃった!」と語っていた。
世の中のものが全て自分のためになると思えるなら、それはもう前向きにならざるを得ない。書籍の169ページにも、こうある。「日常にありふれてるかもしれないけど、そういうところ(=身近に溢れてるすごくささいなこと)に、たくさんのささやかな幸福があるってこと自体が、幸せなのよね。」
いいことは覚えていてこそ
最初のコツとして何事もプラスに捉えることを紹介したが、次はその「プラスを記憶して自分のものにすること」に触れたい。
書籍を読んでいて驚かされたのは記憶力の高さ。本当に日常の些細な事まで記憶して、書籍に取り入れている。
たとえば、114ページからの「無頓着」の大切さについて。テレビのキャスターが「ポコキュランテ」を「日本語で無頓着という意味だそうです」と解説したニュースに、感動したことがきっかけだそうだ。
たとえ、その時に少しいいなと思っても、普通はニュースで一瞬登場した言葉なんて覚えていない。何でもプラスに捉える考え方と、それを自分のものにしようとする田村さんの気概があってこそのエピソードだと感じた。
それだけの記憶力の裏には、覚えるための努力が欠かせない。「忘れる練習・田舎の勉強・京の昼寝」という言葉が好きだから、自宅のカーテンにその言葉を書いているそう。
また、骨まで意識した生活が健康に繋がると知ったことから、忘れないように机の隅に骸骨の人体模型を飾ってもいるという。
メモ魔の側面もあり、仕事場のある区画はたくさんのメモで溢れていた。
プラスを記憶することは田村さんの口から語られたことではないが、プラスの引き出しをたくさん持っている人の方がどんな苦難も前向きに考えられるに違いない。
永遠の少女
仕事場に飾られていた田村さんを紹介するスクラップ記事の見出しは、「永遠の少女」。取材を通じて、こんなにも田村さんに似合う言葉は他にないと思った。84歳という年齢を感じさせない茶目っ気たっぷりのハツラツとした笑顔と、好奇心旺盛さが魅力的だったからだ。
周囲の物事全てが自分のためになるというマインド。それを自分に取り入れようとする姿勢。この二つにより、ポジティブが脳に溢れ、田村さんを永遠の少女たらしめるのではないだろうか。
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この本を読めば、意外な幸せに気付いて、人生がもっと楽しくなるかも!