本棚に眠っている「卒論」をオープンにすれば社会貢献につながる?「卒論 OPEN AWARD 2022」

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朝日新聞社

bouncy / バウンシー

2022年5月中旬、卒論をもっとオープンにしようとする試み「卒論 OPEN AWARD 2022」の表彰式が開催された。今年で第二回目となる本イベントの主催は、知財と事業をマッチングさせるクリエイティブ・メディア「知財図鑑」。
本アワードでは、ビジネス的観点から、学生たちから募集した卒論を評価。受賞した卒論は、知財図鑑のHP内で保管され、誰でも閲覧できる状態になる。
このイベント開催の通知を受けた時、10数年前の苦い記憶が蘇った。
本棚に眠る青春
大学時代の、悠久であり貴重なひとときを割いて書き上げる「卒業論文」。
私も卒論を書き上げるため、研究室にこもった。
里山から持ち帰った土や落ち葉を、ミルや遠心分離機で分解したり、高温で燃焼したり、水を流したり。よくわからないデータを無数に集めていた。それらを用い、ラスト1ヶ月で強引な結果と考察を加えて「えいや!」と、卒論を完成させたのを思い出す。
研究に明け暮れた期間は長かったものの、最後は学科内で十数人の前で発表して終了っと、サラッと終わりを迎える。
自分のプレゼンスキルの乏しさも相まって、あまり研究内容を理解されぬまま。
卒論の冊子は、研究室の本棚に眠っている。そんな人も多いはず。
どれだけ凡庸な研究だったとしても、若人が興味を持ったことに没頭し、初めてlearnではなくstudyした成果(たとえ数カ月でも)を無駄にすることはもったいない。確かに、一見無駄で役に経たなく見える卒論もたくさんあるだろうが、そのアイデアだったり方法だったりから派生して、社会の役にたつ可能性だって無きにしもあらずだ。本棚にしまい込み、埋没させてしまうのは確かにもったいない。
と、本イベントを主催した知財図鑑の考えに大いに賛同し、今回の取材を試みた。
損失を取り戻すべく…
「卒業論文」が世の中からほぼ検索されず、埋没している現状を「未開の社会課題」と知財図鑑は捉え、昨年度よりアワードを開催している。
今回の募集の対象は、在学中の学生および今春卒業予定の学生。SNSなどでイベントの募集を呼びかけた。
56本の卒論が集まったなか、3つのビジネス的な観点から厳正な審査が行われた。
新規性・・・固定観念にとらわれず新たな切り口で仮説を立てているか
応用性・・・多様な企業や団体・研究者が関わり、新たなプロジェクトにつながりやすいか社会性・・・解決が望まれる社会課題との関連性が強いか
今回の審査結果や、卒論の詳細についてはコチラから。
満足の声
受賞した人も受賞できなかった人も、こぞって満足げな表情を浮かべ、本イベントに参加した感想を語ってくれた。
「誰にも読まれることなく終わってしまうのではなく、いろんな方に知っていただけました。新たな切り口を頂けたことで、次に進んでいけるような気がしています。」
「これで、ようやく大学生活が終わった気がします。」
今後の展望としては、学生だけを対象としたアワードにとどまらず、何年前の卒論でも収集し、検索ができるようなオープンな知財として蓄積していくという。
本棚に大事にしまってある卒論をオープンすれば、社会を変える足掛かりになるかも?