あふれる解放感、笑って踊る市民たち アサド政権が去ったシリアの今

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半世紀以上にわたる父子の強権統治で知られたアサド政権が崩壊した中東シリアに13日、朝日新聞の記者が入った。国民の監視や抑圧の象徴だった最高権力者の写真は至る所で破られ、恐怖に支配されてきた町は解放感にあふれていた。
13日朝、陸路でレバノンを出国し、緩衝地帯を車で走ると、シリア側の国境検問所でアサド前大統領の写真をあしらった大きな看板が見えた。アサド氏の顔の下半分が破られてなくなっている。
そのすぐそばには、星が二つのシリア国旗の代わりに、政権を倒した反体制派が使ってきた星三つの旗が、風に吹かれていた。
「ウェルカム」。検問所に配置された反体制派の戦闘員らは記者に手を振った。
検問所を過ぎると、道路脇に政権軍の戦車が、上の扉が開いたままで放置されていた。反体制派の電撃的な進軍を受け、政権軍兵士らは戦闘服を脱いで逃走したのだという。
国境から30分ほどで首都ダマスカスに入り、アサド氏の私邸を探した。シリア人の運転手が場所と尋ねると、歩いていた子連れの父親が指を指して教えてくれた。以前、路上取材の際に、記者が「アサド」という言葉を使っただけで、表情をこわばらせた市民はもういないようだった。