「主文、被告人を懲役1年4か月、執行猶予4年に処する」(札幌地裁 渡辺 史朗 裁判長)
裁判長の言葉に田村修被告はまっすぐ前を向き、証言台に立ちつくしたまま一度、うなずきました。
2023年7月、札幌市ススキノのホテルで頭部を切断された当時62歳の男性の遺体が見つかった事件。
罪に問われたのは親子3人。
札幌市厚別区の田村瑠奈被告(31)が殺人などの罪、父親で医師の修被告(61)は瑠奈被告による殺人を手助けした「ほう助」などの罪、母親の浩子被告(62)は死体遺棄を手助けしたなどの罪に問われています。
2024年6月に始まった浩子被告の裁判では、異様な家族関係が明らかとなりました。
切断した男性の頭部を自宅に持ち帰った瑠奈被告は…
「おじさんの頭もって帰ってきた」(田村瑠奈被告の当日の発言)
「頭部の存在を気付いたのは家に持ち込まれた後。とがめることができませんでした」(浩子被告の法廷での発言)
検察側はその異様な関係を「瑠奈ファースト」と呼びました。
両親は娘から暴言を浴びることも。
「あんたもそのくそアマもよ、どっちもよ。熟女系の風俗にでも売り飛ばせばいい。とっとと売れや、そのくそアマをよ」(瑠奈被告の当時の発言)
そして始まった父・修被告の裁判。
「私は事件が起きて娘の犯行を知った」(修被告の法廷での発言)
初公判で起訴された内容を否認し、4つの罪すべてについて無罪を主張した修被告。
一番の争点は娘・瑠奈被告の殺害計画を事前に認識していたかどうかです。
そのため、法廷では修被告が事件前後にどのような行動をとったのかが確認されました。
事件前には瑠奈被告とのこぎりを購入しましたが。
「指定された化粧品や物品などを購入したことについては殺害や死体損壊のために使うものだと思わなかった」(修被告の法廷での発言)
また瑠奈被告を送迎し、自宅で遺体をビデオ撮影したこと。
そして逮捕まで自宅に遺体を置いたままにしていたことについては。
「頭部があると知らなかった。持ち帰った後に分かった。隠そうと考えたことはなく何もできなかった。ビデオ撮影は直前まで何を撮影するか分からなかった」(修被告の法廷での発言)
一方、2025年2月の裁判では検察側が被害男性の妻の思いを読み上げました。
「親として自ら何もできないなら、人として警察に通報するべきではないか。もし警察が逮捕できなかったらどうなっていたのだろうと思う」(検察側の読み上げ)
検察側は「修被告の関与がなければ計画は実現不可能。『知らなかった』という回答に終始し、反省していない」などとして懲役10年を求刑。
一方、弁護側は「ホームセンターで誰でも買えるものを買ったことで『殺人・死体損壊の目的』と推認するのは無理だ」として改めて無罪を主張しました。
「判決の傍聴権を求めて多くの人が列を作っています」(阿部 空知 記者)
そして3月12日、修被告に懲役1年4か月執行猶予4年の判決が言い渡されました。
理由について渡辺史朗裁判長は。
「事前に瑠奈被告から相談を受け、殺害計画を明かされていたとは言えない。瑠奈被告と事件前の関係に戻らない限り再犯の見込みがないから執行猶予が相当と判断」(渡辺史朗裁判長)
判決後、修被告は裁判長の言葉にうなずき、深くお辞儀をして法廷を後にしました。
その後、裁判員による会見も開かれました。
「20日間近くの日程が組まれて、最初はすごく長く感じた。非日常的な案件が多くてそのあたりの検証や考え方に同意していくことが難しかった」(裁判員を務めた50代男性)
検察側は「検察官の主張が受け入れられなかったことは残念である。今後については判決文の内容を精査し上級庁と協議のうえ適切に対応したい」とコメント。
一方、弁護側は「今後については被告と相談のうえ決める」としています。