“私たちは価値のある行動をしているのか?”「廃棄物」を使ったアートが問う“価値”とは? 現代美術家・平子雄一 成田悠輔×小川彩佳×山本恵里伽

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樹木と人間が融合したキャラクターのフィギュア。1個33万円(税込み)の作品で、30個限定の販売ということですが、人気作品のため、抽選販売にしたそうです。
とても高価なものですが、作家のコンセプトが形となった「価値がある」とされるプラスチックの中身には、「価値がない」とされた廃棄物が使用されています。2つの価値が共存するアート作品からの私たちへの“問いかけ”とは?
■“価値があるモノ”と“価値がないモノ”が共存 「アートには“思考を促す装置”がある」
オープン前の店にできた行列。客の目当てはこのフィギュアです。
韓国から来た男性
「作品のリリースがあると聞いて、仕事終わり次第空港に行ってそのまま飛んできた」
樹木と人間が融合したキャラクターを手がけたのは現代美術家の平子雄一さんです。
現代美術家 平子雄一さん
「ぼくのコンセプトの一つを伝えるための橋渡しになってくれるキャラクターですね」
このキャラクターが生まれた背景には「自然」に対するある疑問があります。
現代美術家 平子雄一さん
「例えば、自然は尊いものだ、癒やされる場所だって、こういう風に接する対象だと思い込んでいるというか、大多数の人がそう思われるのではないかと思っていて、今のぼくたちの状態を表していますね」
人によってコントロールされた植物は本当に「自然」と言えるのか?平子さんはそういった「自然」と「人間」の関係性について問い続けています。今回手がけた透明のフィギュアの中には、“価値がない”として廃棄されたモノが入っています。
現代美術家 平子雄一さん
「自然は大切だよという風にだいたいの人が言うから大切にする。価値があるもの、ないもの、自分たちで判断して定めているだけ」
“私たちは価値のある行動をしているのか?”そんな問いかけとなる材料が神奈川県横須賀市の海岸にありました。
現代美術家 平子雄一さん
「ごみを拾うよりごみを減らすほうが簡単ですね。ただ足並みが揃わないとどうにもならないですけど」
拾い集めているものは、海岸に打ち上げられた海洋プラスチックごみです。およそ3時間で“価値のないモノ”として捨てられた大量のゴミが集まりました。
現代美術家 平子雄一さん
「捨てちゃダメとか使っちゃダメというのは、そういう欲の元にみんな生活して生きているので、難しいので構造を変えていくしかない」
こうして集められた海洋プラスチックごみなどは、スタジオで粉砕されたのちに金色に塗装されます。“価値のあるモノ”とされる平子さんのコンセプトが形となったプラスチックの中に、“価値のないモノ”とされたプラスチックが入ることで、2つの価値観が共存する作品が出来上がりました。
現代美術家 平子雄一さん
「原点に戻れば、それは海に流れ着いたいらなくなったものが、その人(鑑賞者)にとっては価値に変わっているので、もう一度“価値”とはなんだろうと考えることができると思うんです。いるもの、いらないものってなんだろうって決めているのも僕たちだし、そのあたりを考えることもスタートできるのかなと」
作品を鑑賞した人は…
20代「日々ポイ捨てとかをしない意識を育んでいくようなことが社会全体で必要」
30代「子どもたちにも環境保護とか、思考とかを教えてあげたい」
アートによってなにが変わるのか?平子さんはアートには“思考を促す装置”としての役割があるといいます。
現代美術家 平子雄一さん
「アート作品ができることの一つとしては、“考えはじめないといけない”状況を作れると思う。僕も含め一つスタートするきっかけを作るというのが仕事だと思っています」