2023年7月に札幌・ススキノで頭部が切断された男性(62)の遺体が見つかった事件です。一人娘とその両親、一家3人が逮捕された衝撃的な事件の背景を探りました。
忘年会シーズンを迎え、にぎわうススキノ。秋には大型の商業施設も開業し夜のイメージが強いマチは昼の顔も持ち始めています。
7月2日、ススキノのホテルの一室で男性の遺体が見つかった事件。
遺体は浴室でうずくまった状態で首が切断されていました。頭部が無い遺体…誰が男性とホテルに入ったのか。全国有数の繁華街で起きた異様な事件に、警察は240人態勢の捜査本部を設置し容疑者の足どりを追います。
「うわさ程度の情報でも何かなかったですか?」(警察官)
被害者の身元の特定が難しい中、地道な捜査を続ける警察。しかし長期化の様相も見え始めた約3週間後、捜査は急展開しました。
「本日被疑者2名を逮捕しましたので発表します。田村瑠奈、田村修」(札幌中央署 菊地健司 署長)
警察は札幌の無職、田村瑠奈容疑者(29)、父親で医師の修容疑者(59)を死体遺棄などの疑いで逮捕。その後、同居する母親の浩子容疑者(60)も逮捕するなど親子3人が逮捕される事態となりました。
警察は瑠奈容疑者が男性を刃物を使って殺害した実行役。修容疑者が車でススキノまで送るなどしていたほか、浩子容疑者も計画段階から認識し共謀し殺人を行ったとみています。
さらに家宅捜索などで異様な犯行の一端が浮かび上がってきました。
捜査関係者によりますと、3人が暮らす自宅はものであふれ返っていた状態で、浴室から男性の頭部が発見されました。
さらに何者かが手袋を着用した状態で男性の所持品や男性の頭部に触れる動画なども押収。
また犯行前には瑠奈容疑者と修容疑者が札幌市内の小売店でノコギリやスーツケースを購入していたことがわかっており、自宅からは約20本の刃物が押収されています。
「娘が事件を起こしたのは後で知った。計画は知らなかった」(両親)
関係者によりますと、修容疑者と浩子容疑者は共謀を否定しているということです。
犯罪心理に詳しい東京未来大学の出口保行教授は…
「事件が発生してこれだけの時間が経ってもまだ親子の関係性、関与の程度、なぜかかわる必要があったかという必然性、すべてなにも見えていないような事件は、今までの犯罪の中でも非常に珍しい事件である」(東京未来大学 出口保行 教授)
では家族の関係性はどのようなものだったのか?付近の住民はある違和感を感じていました。
「(修容疑者は)車から降りないで明かりをつけて何時間もいたことが多かった。7月に入ってからだと思いますけど、夜中も車置いていないこともあった」(付近住民)
自宅の中ではなく、車の中で食事をとったり、自宅に帰らない日も多かったという修容疑者。逮捕当日もネットカフェにいました。
また、修容疑者を知る医療関係者によりますと、瑠奈容疑者が幼い時からいびつな関係性だったとみられています。
「小学校の低学年の頃、子どもの言いなりというか命令する印象、それに親が従う。親子の関係が普通じゃないなと」(修容疑者を知る人)
関係者によりますと、瑠奈容疑者が小学校低学年の時から修容疑者と浩子容疑者が「言いなり」の関係性に感じられたといいます。さらに…
これは事件前の5月下旬、ススキノのダンスクラブで撮影された映像です。瑠奈容疑者と被害者の男性が楽しそうに過ごす様子が映っていました。
捜査関係者によりますとこの日が男性と初対面でした。
しかし、この映像にはもう1人映っていることがわかりました。父親の修容疑者です。
瑠奈容疑者を見守っていたのでしょうか。少し離れた場所で立っています。
この映像を見た犯罪心理に詳しい専門家は…
「度を越した過保護であったと推測される。ヘリコプターペアレントと呼んでいます。子どもに何かがあったときに常に救助する態勢をずっとこの親子間では続けていたことがわかるシーン」(東京未来大学 出口教授)
3人は現在2月下旬までの鑑定留置が決まり、刑事責任能力の有無を判断するための精神鑑定などが行われています。ススキノで起きた猟奇的な事件はどのような結末を迎えるのでしょうか。