表現の自由の侵害か? 警備の適切な対応か? "道警ヤジ排除訴訟"は6月22日控訴審判決へ

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表現の自由の侵害か、警備の適切な対応か。
 2019年、北海道札幌市で安倍元総理にヤジを飛ばし、警察官に排除された男女が起こした裁判の控訴審判決が6月22日言い渡されます。
 原告 大杉 雅栄さん(35):「両手をこうやって口元に当てて「安倍やめろ」と言った。遅くともこう言い始めてから10秒後にはもうつかまれて」
 「帰れ!安倍帰れ!安倍やめろ!安倍やめろ!安倍やめろ!安倍やめろ!」
 大勢の警察官に取り囲まれひきずられていく原告の大杉雅栄さん。
 原告 桃井 希生さん(27):「理由があると思ってそれをずっと聞いていたのに、全然答えない。状況がわからないっていうのがすごく怖かったです」
 「増税反対!」
 もう一人の原告、桃井希生さんは警察官に腕をつかまれ、引っ張られた後…
 警察官:「もう大声出さない?大声出したら止めなきゃならないから」
 
 …1時間以上、警察官につきまとわれました。
 4年前、札幌で参院選の応援演説をしていた安倍元総理にヤジを飛ばし、警察官に排除された2人。
 「表現の自由の侵害で精神的苦痛を受けた」として、道に660万円の損害賠償を求めて訴えを起こしました。
 被告の道側は「周囲とトラブルになる危険があった」として、排除は警察官職務執行法にもとづいた適切な対応だったと主張しました。
 そして、2022年3月…。
 原告 大杉 雅栄さん:「ヤジを飛ばすことは表現の自由の一部なんだとはっきり明言してくれたので、本当にうれしい判決です」
 札幌地裁は「政治批判の機会を無理やり奪われた表現の自由の侵害で、違法と言わざるを得ない」として、88万円の支払いを命じる判決を言い渡しました。
 道側は控訴し、新たな証拠として、ヤジを飛ばした大杉さんを手で押した男性の動画や、大杉さんを排除しなかった場合、物を投げるなどの事件が起こり得たとする実演動画を提出。
 「要人警護や犯罪防止が困難になる」として、一審判決の取り消しを求めています。
 一審判決から約3か月後、選挙演説中に安倍元総理が銃撃され、2023年4月には岸田総理に爆発物が投げられる事件も発生。
 SNSなどでは「判決の影響で警備が委縮したのでは?」という声もあがりましたが、警視庁・特殊急襲部隊(SAT)の元隊員・伊藤鋼一さんは…
 警視庁SAT元隊員・伊藤 鋼一さん:「萎縮するってことはありえない話ですよ。警備に対する甘さが奈良県警・和歌山県警にあった。(一審判決とは)全然切り離して考えていただいた方がいいと思います」
 警備と表現の自由は別物だと話す伊藤さん。
 大勢の警察官が行ったヤジの排除に違和感も覚えていました。
 警視庁SAT元隊員・伊藤 鋼一さん:「北海道警察はやりすぎた。警備力を使って守るっていうことは、警察に与えられた使命ですから。表現の自由の方が上ということではなく、やっぱり(警備と)両立させないといけない」
 一審判決では、原告の大杉さんが街宣車に向かって走ったのを警察官が止めたのは適切だったともしています。
 6月22日の二審判決を前に原告2人の心境は…
 原告 大杉 雅栄さん:「要人警護をするなと言っているわけじゃない。それはそれでやりつつ、表現の自由を守ってくれればいい」
 原告 桃井 希生さん:「ヤジすら飛ばせない国で、何が表現の自由だっていうふうに思います」
 2人の原告は控訴の棄却を求めています。
 ヤジの排除は適切だったのか、それとも表現の自由の侵害だったのか。
 二審の判決は6月22日午後3時ごろ、言い渡されます。