蘭越町で“水蒸気”噴出 まもなく1か月 広がる風評被害…米は一部出荷停止 温泉宿では予約キャンセル相次ぐ

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後志の蘭越町で水蒸気が噴出してまもなく1か月が経とうとしています。
 ヒ素や硫化水素が流れ出したことで風評被害が広がり、「お米と温泉の町」がピンチです。
 お米のおいしさ日本一を決める「米-1グランプリ」。
 毎年、蘭越町で開かれ、2022年までに大会は11回行われました。
 「米どころ」蘭越町の蘭越米は、グランプリや準グランプリに何度も選ばれています。
 しかし…
 水蒸気が噴出し、ヒ素や硫化水素が周辺の地域に流れ出しました。
 噴出が始まってまもなく1か月。
 蘭越米が、そして温泉が今、風評被害に遭っています。
 6月29日、蘭越町の地熱発電の掘削現場で、三井石油開発が作業中、水蒸気が噴出した問題。
 現場からは石英などの鉱物のほか、高濃度のヒ素や硫化水素が検出され、周辺の木々は変色してしまいました。
 硫化水素中毒などで体調不良を訴えた人は27日現在、19人にのぼっていて、「米の町」蘭越町で不安が広がっています。
 米農家 西澤 雅明さん:「『ゆめぴりか』です。(取水制限で水田が)ひび割れたが、影響が出るまでのひび割れではない」
 米-1グランプリで金賞を獲得した経験がある西澤雅明さんです。
 西澤さんの水田は水蒸気の影響を受けませんでしたが、風評被害が広がっていることが心配です。
 現場では最大で飲料水の基準の2700倍となる高濃度のヒ素を含む水が、1日2000キロリットルのペースでたまり、掘削作業を行っていた三井石油開発は7月2日から17日までその大部分を敷地外へ放出していました。
 近くの川では一時、農業用水の基準値を上回るヒ素が検出され、9日間にわたって最大70戸の農家が取水制限を強いられました。
 その後、濃度は下がりましたが、出荷に影響が出ているといいます。
 米農家 西澤 雅明さん:「実際に早くに出荷停止されたところもあるみたいだし。(Q:出荷停止になった?)そうですね、検査してくれと」
 蘭越町民:「米を買いに来た人に『大丈夫か、検査しているのか』と言われる。去年の米だから問題はない」
 蘭越町民:「何か害があるみたいだから。(風評被害を)みんな心配している」
 蘭越町は「温泉の町」でもあります。
 ヒ素を含んだ水は温泉が引き込んでいる源泉「大湯沼」の方向に放出されていました。
 放出現場から温泉までの距離は数百メートルです。
 蘭越町は温泉を臨時休業し、温泉水を検査。
 ヒ素の濃度は入浴しても影響がないレベルだったため、町は営業を再開しました。
 しかし、近くの温泉宿では10組以上の客が予約をキャンセルしました。
 観光客の男性:「体に影響がないのか心配しながら山から下りてきた」
 町長は…。
 蘭越町 金 秀行町長「自然環境を含めた蘭越町の風評被害をどう対応するのか。町民が安全安心を1日も早く享受できるように町として努力する」
 三井石油開発は今後、土壌汚染の調査を行う方針で、8月中旬をめどに水蒸気の噴出を止めたいとしています。