知床観光船“元従業員” の新証言「起こるべくして起こった…」ベテラン辞め崩れていった安全運航の意識

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行方不明者12人の捜索が続く知床沖の観光船沈没事故。
 運航会社の元従業員がUHBの取材に対し、安全管理が軽視されていく社内の様子を証言しました。
 知床沖で4月23日に26人を乗せた観光船「KAZU1」が沈没し14人が死亡、12人が行方不明となった事故。
 5月11日も海上保安庁などが行方不明者の捜索を続け、無人潜水機による船体の調査が行われています。
 こうした中、5月11日運行会社の「知床遊覧船」に電波法違反の可能性が浮上。
 緊急時以外に業務での使用が禁止されているアマチュア無線を会社が日常的に使っていたとみて、北海道総合通信局が5月12日から聞き取りをすることになりました。
 Q:知床遊覧船で桂田 精一 社長は何をしていた?
 知床遊覧船の元従業員:「桂田社長はホテル経営に力を入れていて、船に関してはスタッフ任せ。事務所には週1回来るか来ないか」
 そう話すのは2018年に知床遊覧船で受付などを担当していた元従業員。
 ほとんど事務所に現れない桂田精一社長に代わり、当時、船の安全運航を支えていたのは5人のベテランスタッフだったと言います。
 知床遊覧船の元従業員:「船長はじめ、甲板員なども全員天候を把握していた。欠航もほかの会社に比べて1番早く決めていた。桂田社長は海の知識がない。(欠航判断を)社長はしぶしぶ『わかった』という感じ」
 しかし、桂田精一社長は「意見の不一致」という理由でベテラン達を冷遇。
 スタッフが次々と辞め知床遊覧船は2021年、新たな体制となりました。
 そんなときに船の運航を任されたのが今も行方がわからない豊田 徳幸 船長でした。
 知床遊覧船の元従業員:「豊田船長も操船歴が長いということで自信満々。実際、海に出たら全然…。(2021年6月に)座礁事故を起こした。出港して5分かからない場所。そんなところで座礁するの? と心配していた」
 風が強く波が高い知床の海。岩礁が多く慣れるには時間を要する難所だと言います。
 元従業員は客の要望よりも安全を優先すべき場所だと話します。
 知床遊覧船の元従業員:「(新体制になって)波が荒れてる時に、『もっと先に行きたい』と言う客が多いから、喜んでもらうために無理して運航していた。ベテランがいたときは絶対にしなかった。起こるべくして起こった」
 知床遊覧船では2021年6月、国交省の特別監査で出航判断の経緯を記録していなかったとして改善指導を受けていたことが新たに判明。
 新体制で崩れていった安全運航の意識。
 海保などは引き続き業務上過失致死容疑で調べを進めています。