知床は"救助の空白地" 沈没事故ヘリ到着まで3時間 広すぎる北海道 悲劇を繰り返さないために…

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北海道知床半島沖で26人を乗せた観光船が沈没した事故で、ヘリコプターの到着まで約3時間かかったことで救助体制のあり方も問われています。悲劇を繰り返さないためには何が必要なのでしょうか。
 5月16日も行方不明者の捜索が行われている、観光船「KAZU1(カズワン)」の沈没事故。
指摘されているのが、救助体制の不備です。
 国土交通省 斉藤鉄夫 大臣:「海上保安庁が捜索救助を実施する場合、現状において、ヘリコプターからの吊上げ救助を行う、機動救難士等がヘリコプターに同乗し、出動してから(知床は)1時間で到達することができない海域です」
 斉藤国交相の言う1時間という時間。海上保安庁はヘリコプターから救助を行う機動救難士が1時間以内で現場に到着できるよう体制整備してきました。
 しかし、知床などの道東や道北エリアはこの「1時間出動圏」から外れています。沈没事故は「救助の空白地」で起きてしまいました。
 「KAZU1(カズワン)」の事故では、ヘリコプターが現場海域に到着したのは約3時間後でした。その理由は…
 機動救難士は、全国に9カ所ある航空基地にそれぞれ9人が常に待機しています。北海道はその機動救難士が待機する基地が函館にしかありません。
 海保は半径185キロを1時間圏内として定めていますが、知床までは直線距離で450キロ以上離れています。
 斉藤 国交相はこの「空からの救助体制」を見直すとしました。
 斉藤鉄夫 国交相:「各航空基地のヘリコプターの増強や機動救難士が配置されていない航空基地への機動救難士の配置などを進めるなど、捜索救助に万全を期してまいりたいと思っています」
 専門家は広大な北海道の海を守るには、ヘリコプターと船との連携を強化すべきだといいます。
 水難学会 斎藤 秀俊 会長:「巡視船の大型のものを、オホーツク沿岸に配置するっていうのも考えられる。なぜかというと、ヘリコプターは航続距離・時間は限られてくる。ヘリコプターが活動している時に、近くに大型の巡視船があって、ヘリが給油のためにそこに降りる。そこで給油、隊員の休息、交代をしてまたすぐに出る、現場近くで繰り返しできる。そうすると航続距離・時間がクリアできるようになる」
 現在、北海道内にある海保の巡視船で、ヘリコプターを搭載できる大型の船は知床に一番近いところでは釧路にしかありません。
 斎藤さんは船との連携で捜索の範囲は大きく広がると考えています。
 今回の事故では、運航会社の連絡体制の不備なども明らかになっています。
 斎藤さんは運航側の徹底した安全対策も欠かせないといいます。
 斎藤 会長:「海保の努力ばっかりだけではだめで、旅客を運ぶ方にも努力をしてもらわないといけない。助けを呼ぶ人と助けに行く人とこの2つの技術と努力がかみ合わないと海難は生還できない」
 悲劇を繰り返さないために、安全対策の見直しが求められています。