消費低迷にエサ代の高騰など、次々と逆風にさらされる町の基幹産業を応援するイベントが十勝の士幌町で開かれました。
「牛乳のおいしさを知って欲しい」。
会場には酪農家たちの思いがあふれていました。
子どもたちが小麦粉に牛乳を入れて、こねているのは…。
石窯で焼いた具だくさんのピザです。
来場者:「おいしい!」
7月9日、十勝の士幌町であるイベントが開かれました。
会場に並んでいるのは地元の乳製品を扱う士幌町内の飲食店など27のブース。
酪農の街ならではの数々の料理が訪れた人を楽しませていました。
来場者:「ヨーグルトソースがおいしいです。」
乳フェス 古田 全利 実行委員長:「飲んで、食べて、牛の命のことを感じていただければと思っています!」
牛乳や乳製品の消費拡大をねらい、開催された「乳フェス」。
長引いたコロナ禍にエサ代の高騰。
会場には逆風にさらされる酪農家たちの思いがあふれていました。
酪農家たちの思いが詰まった「乳フェス」。
実行委員長を務めた古田全利さんは士幌町で約50頭の乳牛を飼育しています。
牛たちのエサには遺伝子組み換え飼料を使わない。
こだわりの生乳は町内の「品質指標ランク」で1位、2位を争う高品質です。
乳フェス 古田 全利 実行委員長:「以前は1頭あたり、38キロくらい絞っていましたが、配合飼料を減らして30キロくらいに抑えています」
長引いたコロナ禍で牛乳の消費量が落ち込み、酪農家は生産抑制を求められました。
乳量を減らすためエサを減らしたほか、大切に育ててきた牛の一部を手放しました。
乳フェス 古田 全利 実行委員長:「牛を淘汰するのは何でもない命を奪ってしまう。そういう牛の姿を見ているとつらくやるせない。悲しいですね」
そんな酪農家を一層、苦しめているのが、エサとなる穀物の高騰です。
日本ではトウモロコシなど穀物の大半を輸入に頼っていますが、ウクライナ情勢による原油の高騰や円安などで値上がりが続いています。
乳フェス 古田 全利 実行委員長:「穀物飼料が値上がりしていて、経営に重くのしかかっているのはすごく感じています」
人口の11倍にあたる、牛7万頭がいる酪農と畜産の町・士幌町でも、多くの酪農家が苦境に立たされました。
「酪農家が主役のイベントができないか」。
町の基幹産業の応援しようと、声を挙げたのは地元の中学生たちでした。
約5か月間かけて、準備を進めてきたのが「乳フェス」です。
道の駅を運営 at LOCAL 堀田 悠希 代表取締役:「酪農地帯・士幌町として、たくさんの酪農家が集まって、元気な町だということをイベントで表現できれば」
そして迎えた当日。
天気にも恵まれ、家族連れなど大勢の人でにぎわいました。
会場には子牛も登場し、子どもたちが触れ合ったり、牛の人形で分娩も体験。
命の大切さを学びました。
来場者:「牛乳が大好きなので牛のことを思い出しながら飲みたい」
『乳フェス』のメインイベントとなったのは「利きミルク大会」。
3種類の牛乳を飲み比べ、口当たりや風味などでわずかな違いを探ります。
司会:「答えは"B"!」
利きミルク大会 正解者:「やったー!」
利きミルク大会 正解者:「種類によって味が違うのが分かったので、いつもと違う牛乳も冒険して飲んでみようと思いました」
初開催の「乳フェス」。
来場者は3千人を超える大盛況でした。
乳フェス 古田 全利 実行委員長:「たくさんのお客さんに来てもらって大成功でした。乳製品のおいしさや味わい方が伝わったら消費拡大になるのかなと。牛の命の大切さがすごく伝わったのではないのかなと思います」
牛乳や乳製品のおいしさ、命の大切さを知って欲しい。
酪農家たちの奮闘は続きます。