知床半島沖で観光船が沈没し14人が死亡、12人が行方不明となっている事故。潜水士による調査のため民間の作業船が5月10日現場海域へ向けて出港しました。
石井 祐里枝アナウンサー:「捜索に出ていた観光船が正午前戻ってきました」
9日ぶりに捜索に出た観光船・おーろら。
観光船おーろら・スタッフ:「きょうは何にも手掛かりが見つからなかった」
行方不明となっている12人の手掛かりを見つけることが出来ませんでした。
海上保安庁などは知床沖や国後島周辺で捜索を続けるとともに作業船「新日丸」が無人潜水機で沈没した観光船カズワンを調べています。
今後は水深115mの深さに潜水士が潜って捜索する「飽和潜水」と呼ばれる特殊な方法がとられます。
水難学会 木村 隆彦 事務局長:「一番問題なのは飽和潜水をどのような形でやるのか、引き揚げをどのようにするのか」
明治国際医療大学の教授で水難学会の木村隆彦事務局長は、飽和潜水は命がけの作業だと指摘します。
木村 事務局長:「環境に体を慣らしていく。強風が吹いたり、波が高いとなればその時点で中断して上がってくる」
船の設備に人が入り、海底の水圧と同じくらいになったら海中におろし、人が海に出て作業します。
木村 事務局長:「安定的に上げないといけない。水平を保ったまま上げるこうなってはダメ。想定外があってはならない活動」
気になる引き揚げの時期は…
木村 事務局長:「どう考えても夏になるだろう早くても6月。夏の時期に全ての作業が完了すると考える」
その「飽和潜水」の機材と潜水士を乗せた船が5月10日午後、北九州市から出航しました。
日本サルヴェージの作業船「海進」が救助船「早潮丸」とともに現場海域を目指し、到着は来週以降になる見通しです。
一方、カズワンを巡っては運航会社のずさんな対応がまた明らかに…
知床遊覧船の元従業員:「私たちのところはアマチュア無線。衛星電話もついているが使うことはない。アマチュア無線で足りていた。業務に使ったらだめ。9割、業務で使っているけどね」
元従業員が証言した通り、運航会社の知床遊覧船を巡っては2021年6月の国の特別監査で「業務用無線」ではなく、「アマチュア無線」を使用し行政指導を受けていました。
さらに事務所の無線アンテナが壊れていたうえ、事故当日は船の衛星電話も故障。そのうえ、航路の大半が圏外となる携帯電話が通信手段として登録されていました。
こうした事態を受け国土交通省は全国の小型旅客船事業者に対し通信設備などの緊急安全対策を実施する予定です。
携帯電話を通信設備とする事業者には航路全域が通話可能であるかを確認し、不備があれば速やかに対応させます。難航する行方不明者の捜索と並行しながら、再発防止に向けた取り組みも始まっています。