「苦労が踏みにじられた…」世界遺産に尽力した元町長が語る沈没事故の“余波” 観光客は帰って来るのか

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北海道知床半島沖で26人を乗せた観光船が沈没した事故で、事故から2週間が過ぎても、献花台に花が途絶えることはありません。北海町斜里町のマチは悲しみに包まれています。
 世界遺産登録に力を尽くした、元町長が胸の内を語りました。
 献花をした人:「切なくて悔しいというか、残念ですね。諦めきれないですよね、ご家族はね」
 事故から2週間余り。斜里町に設置された献花台には5月9日も花が手向けられました。沈没した「KAZU1(カズワン)」の運航会社のずさんな安全管理体制が次々と明かになっています。
 献花をした人:「もう許せないですよね。あんな事が事前に分からないのかと。今後はみんながきちんとしてくれれば。でも犠牲が大きすぎる」
 献花をした航空機を整備する男性:「お客さんの命を預かる仕事をしているので、もうちょっとしっかりとしてほしかった。こんなにずさんだと利用している方はわからないので」
 世界自然遺産・知床。豊かな自然を体感する観光船で起きた悲惨な事故。本格的な観光シーズンを迎えた斜里町は活気づくはずでしたが悲しみに包まれています。
 斜里町 元町長 牛来 昌(ごらい さかえ)さん:「大勢の観光客を乗せて行くのは良いんだけど経営する会社の責任は大きく問われるから残念です。本当に」
 こう語るのは斜里町の元町長 牛来昌さんです。1987年から5期20年間町長を務めした。
 在任中は世界遺産登録に力を尽くし2005年、知床は世界自然遺産に登録されました。
 牛来さん:「苦労をして世界遺産にしたということを含めて、知床の価値は豊かな自然と住む人々の暮らしが原点だから、その原点を踏みにじることは地元の一人として、残念でしょうがない」
 人と自然の共存が評価された世界遺産・知床。ずさんな安全管理によって長年の取り組みに水を差されることを懸念しています。
 牛来さん:「当たり前のことができなかったことが、事故につながったから、反省してこれから未来に向けどう歩み続けるか。斜里町にとっては大きな課題ですよ」
 町民の努力で築き上げた世界遺産・知床。今回の事故を乗り越えることはできるのでしょうか?
 牛来さん:「二度とこういう事故が起きない地域づくりを、どう一人一人考えるか。情けないけど今はそれしか言えない。僕らは決して諦めない。知床の素晴らしさを理解してもらうために努力するしかない」
 斜里町を訪れる観光客は年間110万人あまり。コロナ禍にみまわれたここ2年間は60万人台前半にまで落ち込んでいました。
 世界遺産を訪れる人は帰ってくるのか。知床は正念場を迎えています。