AIなど駆使したフェリーに記者が乗船、自動化実験で見えた課題は

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岸壁を離れて海に出てから港に戻るまでの航行を自動化した大型フェリーの実証実験が17日、瀬戸内海であり、約7時間のクルーズに記者が乗船した。AI(人工知能)や自動操船システムを駆使した船の行く先では、漁船や貨物船、強烈な横風などさまざまな障害が航行を阻む。実験では、安全や法律を守る以外に「ある課題」が見えてきた。
 午前8時半、新日本海フェリーの関連会社が運航する大型カーフェリー「それいゆ」(全長222メートル)が、北九州市門司区の新門司ターミナルの岸壁を静かに離れた。
 間もなく船橋に「ヨーイ、テ」「AI航行スタートしました」との声が響いた。誰もかじを取っていないのに船は後進し、ゆっくり回頭すると、港の出口に船首を向けていった。
 狭い水域で障害物が多い港内での操船には通常、繊細さが求められる。この日は風が強く、船体が流されそうになる。船橋は緊張感に包まれたが、船は難なく周防灘へと進み出した。
 船を動かしたのは、三菱造船が開発した自動操船システムだ。離着岸時にはAIが、それ以外では設定された航路に沿いつつ危険が迫れば回避ルートを探して進むように組まれたプログラムが頭脳となり、かじやエンジンに指示を出す。
 出港して間もなく、沖合に出ると多数の船と行き交った。正面に停泊作業中の貨物船が近づいたが、プログラムは針路を保ったまま。緊急時に備えて船橋で見張りをしていた船長が「(針路を)曲げたいなー」とつぶやく。
 貨物船との距離が1マイル(約1・8キロ)を切ったところで針路が右に向けられた。「ぎりやったなー」。船長の言葉に、居合わせた船員や技術者たちから笑いがこぼれた。
 その後は巧みな自動操船が続いた。人間が操船していたらよけないような他船の動向にも危険を察知して微妙に針路を変えたり、十数キロ先の他船との危険を予測してかなり早めの回避動作をとったりと、プログラムは順調に作動しているように見えた。
 午前11時前、国東半島沖の伊予灘に至ると、船は旋回して再び新門司へ。周囲には、漁船や貨物船などの他船が増えた。ある船との衝突の危険が生じたところで、プログラムが示したルートに船長が異議を唱えた。