地球のためビルに穴をあけた 豪州に新風、日本人建築家

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オーストラリアのシドニーに「(世界遺産の)オペラハウス以来か」との声も出た斬新な外観の建物が登場した。設計したのは、シドニー在住の日本人建築家。ひときわ目を引くビルの先に見据えるのは、二酸化炭素(CO2)を吸収する「カーボンポジティブ」の住まいだ。
 シドニー中心部から南に車で10分。再開発が進むグリーンスクエア地区に昨年5月、「インフィニティ(無限大)」という名のビルが完成した。
 20階建てで、マンションやホテル、飲食店などが入る。総工費5億7500万豪ドル(約480億円)。これだけなら都会の複合施設の一つにすぎない。目を奪われるのは、ビルの真ん中の大きな「穴」だ。
 シドニー在住の建築家、髙田浩一さん(49)が設計した。穴から自然の風を通して換気することでビルを冷却し、夏場でも、マンションでは年に4、5日しかエアコンがいらない。
 穴は、南半球では日が差し込んでくる北向きに開いている。差し込む角度の高い夏場は、鉄道駅に直結する公共スペースの中庭に日陰ができ、低角度の冬場は日が当たる。マンションの部屋や、隣の地下にできた新しい図書館にも十分な自然の光を与える。
 「穴を開けて、環境への過重を減らし、ビルを社会に開放する狙いがあった」と髙田さんは説明する。
 飲食店の入り口もある中庭はいま、人々が行き交い、ベンチでくつろぐ。スマートフォンで写真を撮っていたアンドレイ・カタシェフさん(49)は5年ぶりに帰国したばかり。「通りかかって驚いた。すばらしいデザインだ。高い技術も感じる。今、写真を友達に送った。シドニーは変化している」と興奮気味だ。
 ビルは、製粉所やれんが工場、倉庫街があった都心に近い産業地区を住宅街として再生するシドニー市の事業の中心施設の一つ。市が2013~14年に開いた設計の国際コンペでは、穴の開いた案は髙田さんのものだけ。コンペで選ばれたものの、デザインは建築界で賛否両論だった。
 地元紙の建築批評で「目の毒だ」と書かれたこともある。船の帆や貝殻をイメージさせる独特の形状が論争になったシドニーオペラハウスのデザインの決定時(1957年)以来の反響だ、という指摘もあった。