「飛び降ります」と男性、帰宅中の3人が引っ張り命救う 大阪

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大阪市北区の淀川にかかる橋で9月、通りかかった3人の会社員が、橋から飛び降りようとする人を救った。つかんで引き留めながら、警察に電話で通報。たまたま居合わせ、互いに見知らぬ3人の息の合った連携。「助かって良かった」と口をそろえた。
 「身の危険を顧みず積極果敢に行動し、男性を救助した。感謝の意を表します」。12日、大阪府警は70代男性の命を救ったとして大阪府高槻市の得居(とくい)和之さん(63)、大阪市淀川区の安永真唯(まゆ)さん(24)、大阪市東淀川区の尾形悟さん(38)に感謝状を贈った。
 9月28日午後6時すぎのことだった。淀川にかかる幅約16メートルの新淀川大橋。車通りも多く、帰宅時間帯で、人も行き交っていた。得居さんは会社から新大阪駅へ向かおうと橋を渡っていた。真ん中あたりにさしかかったころ、ポロシャツにスラックス姿の男性が前から歩いてきた。「疲れたので荷物を持ってほしい」。突然、男性から杖とかばんを手渡された。
 理由がわからなかったが応じた得居さんの目の前で、男性が120センチほどの高さの欄干を乗り越え、橋のへりに立った。得居さんの方に向き直り、「預けた荷物の中に身分証が入っています。末期がんで家族に迷惑をかけたくないので飛び降ります」と告げた。
 「自殺しはるんや、とその時初めて気づいた」と得居さん。とっさに両手で男性の左腕をつかみ、「落ちたらあかん」と男性に語りかけながら、周囲にも「助けて下さい」と呼びかけた。
 安永さんは80メートルほど離れた場所を歩いていたとき、男性が欄干を乗り越え、得居さんが必死に男性の腕を引っ張っている姿をみかけた。「これはまずい」。急いで駆けつけ、男性の右手を引っ張った。男性は「手を緩めてくれ」と川に落ちようと体重をかけた。
 「写真でも撮っているのかな」。同じ頃、橋を通りかかったのが尾形さんだった。だが、近づくと必死に腕を引っ張っている2人が見えた。すぐに駆けつけ、右手で男性の腰のベルト付近を引きながら、携帯電話で110番通報した。
 警察が到着するまで約10分。「離してくれ」と頼む男性に、3人は「離さへん」などと声をかけながら、川へ落ちないように歩道側へ引っ張り続けた。「警察が来るまで長く感じました」と尾形さん。得居さんはパトカーのライトを見て、「やっと来てくれはった」とほっとした。
 レスキュー隊が男性を救助。3人は感謝状を受け取った際に、男性の家族も感謝していると伝えられた。
 得居さんはその日、家族に様子を話したが、半信半疑だったという。「もらった感謝状を証拠として見せます」と笑った。偶然の巡り合わせで命を救った3人。安永さんは「まさか自分が命を救うことになるとは。たまたま居合わせただけだけど、生きるって助け合いだなと感じました」と笑顔で話した。
 感謝状を手渡した大淀署の吉村仁志署長は「なかなかできることではない。人命を助けてもらい、感謝している」と話した。