「やわらかさ」で社会変える 若手研究者が考えるロボットと人の未来

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「やわらかさ」をキーワードに社会のいろんな課題を解決したい。山形大の研究室がそんな思いで挑戦を続けている。学生時代は海藻の研究に打ち込んだという、若手の准教授が思い描く未来とは――。
 「プシュー」と音がすると、シリコーンでできた一辺2センチほどの四角い箱がぎゅっと縮んだ。山形県米沢市の米沢キャンパスにある研究室。箱には管が差し込まれ、音がしなくなると元の形に戻った。
 「空気を抜いて箱を動かしています」と学術研究院准教授の小川純さん(33)。箱の中はキャンプファイアの木の組み方のような井桁構造のポリウレタンが入っている。3Dプリンターでつくられ、動きを制御している。
 「箱をいくつか接続し、腕が曲がるように動かせば物を持ち上げられます」。箱に土を入れて農作物を育て、収縮させた箱を手のように動かして収穫できないか。箱にゲルを詰め、建材として使って耐震構造に役立てられないか。車体に使えば交通事故の被害が軽くなるかもしれない。アイデアは尽きない。
 情報科学が専門の小川さんが、北海道大の学生時代に向き合ったのは海藻。水の流れをコントロールし、光合成の効率をどうすれば上げられるかなどを研究した。やわらかいもののシミュレーションを追究しようと26歳のときに1年間、米コロンビア大に留学。そこで「やわらかさ」の奥深さに魅了された。
 現在は材料や構造を専門にする古川英光・山形大教授の山形大ソフト&ウェットマター工学研究室に所属。研究室には3Dプリンターによる造形の専門家もいて、さまざまな知見を自らの研究に生かせる環境にある。
 研究室は2019年に開発した「やわらかロボ!ゲルハチ公」で話題になった。触ったり話しかけたりすると鳴き声などで反応する。20年には「ゲルハチロイド」が誕生。3Dプリンターでつくった骨格をシリコーンで覆った。ヒーターで体温を再現し、涙を流す機能を持たせた。
 21年春、小川さんは「やわらかアニマロイド」を打ち出した。動物とアンドロイド(人型ロボット)の造語で、ロボットのやわらかさと人の感じ方の研究だ。
 やわらかい素材でつくったフクロウにセンサーを入れ、力が加わるとわかるようにもしてみた。見すえるのは医療分野。病院などにフクロウを置き、自然に触ってもらう。握り方や握る力で、症状を言葉にできない子どもの問題を見つけたり、リハビリに応用したりできないかと考えている。
 小川さんは「やわらかい材料や構造を生かし、生活様式を一変させるような社会貢献がしたい」と意欲を見せる。