ソノカムペアがこだわる圧倒的な低空戦 ともに169センチ、嘉村はまるで千手観音!?

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 2人の身長はまったく同じ169センチ。ちょうど、ネットから少し顔が出るくらいだ。そんな2人が、190センチ近い外国人ペアが驚くような速さのショットを決め、次々と得点を奪う。
 「上背もないし、スマッシュのパワーでは勝てない。僕たちにしかできない『低空戦』が勝負」。バドミントン男子ダブルスで世界ランキング4位に立つ園田啓悟と嘉村健士(かむらたけし)のソノカムペアは口をそろえる。
 2人が得意とする低空戦は、「ノーロブ」といわれる戦術だ。大きく山なりで返すロビングをあげず、直線的な軌道のドライブやプッシュを多用する。めがけるのは、ネットすれすれの、10~15センチ上の高さ。相手に息もつかせぬ高速ラリーで圧倒する。
 ともに29歳。誕生日が6日しか違わない2人が初めてペアを組んだのは15年前だった。熊本・八代東高の練習に、中学3年で参加した夏だった。「当時から展開が速くて、リズムが合った。これは面白いペアができると思った」と同高の権藤浩二監督は振り返る。
 中学生にして、練習で次々と高校生ペアに勝った。ゲームメイクを担い、主に前衛を務める嘉村は「誰かに教えてもらったわけではなく、啓悟と組んだら自然とこういうプレーになった」と話す。
 一方で、スマッシュが得意で後衛でカバーする園田の感覚はちょっと違う。「健士がとにかく打つのが速くて。遅れないようにまねして打っていたら、いつのまにか、低くて速いラリーになっていた」
 早大で嘉村を指導した今井茂満監督は「嘉村には手がどこにでも出る天性の反射神経の良さがある。まるで千手観音のよう」と評する。その「速さ」を養ったのは、高校時代の実業団での武者修行だった。
 八代東高では当時、日本リーグに所属していた強豪のくまもと八代YKKAPに通い、社会人と技を磨いた。一日の練習を終える頃には、体はクタクタ。「フットワークが苦手で、レシーブをする元気もなくて。もう動くのが嫌だったので、ひたすらラケットを動かすドライブの練習ばかりしてました」と嘉村。高校生では返ってこないような回転、スピードで打ち合ううちに、嘉村はドライブ練習にのめり込んだ。
 ラリーの中で、速い展開を得意とするペアはほかにもある。2人が珍しいのは、「低空戦」にとことんこだわったことだ。
 バドミントンはラケットに当たったときの初速が時速100キロ台後半~300キロ台ととにかく速い。一方で、大きく減速するため、相手と距離をとって当てるほどシャトルは遅くなる。
 「日本が弱かったころは、技術がなく、速いドライブを続けてもミスが出た。ネットにかかるのを嫌って、大きな展開を使うように指導する人もいた」と解説するのは、現在、2人が所属するトナミ運輸の荒木純監督だ。インドネシアなど世界のトップは10年ほど前から速い展開に変化していた。トナミ運輸ではインドネシア人の指導者を招き、とにかく速い展開への意識を植え付けてきた。「ようやく、日本が時代に追いつき、今では追い越すようになった」
 来年の東京五輪を、2人は30歳で迎える。「年齢的にも、これが集大成」と2人はいう。リオデジャネイロ五輪で金メダルをとった高橋礼華(あやか)、松友美佐紀組をはじめ、過去五輪で日本がとった三つのメダルはすべて、女子選手によるものだ。「僕たちのラリーを見て、バドミントンって面白い、男子ダブルスってかっこいいって思ってもらえたら」。そんな思いで1年後の舞台を目指している。(照屋健、写真=林敏行)