オタ芸は「ダンスだ文化だ」 ステージに上がった男たち

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アイドルのライブでペンライトを持って踊る「オタ芸」。客席の盛り上げ役がステージに上がり、主役になろうとする動きが出ている。
 2019年の大みそか、石川県小松市。1300年以上の歴史を持つ真言宗・那谷寺(なたでら)の山門前に人だかりがあった。視線の先には白いシャツとズボンの男性3人。津軽三味線の吉田兄弟が奏でる激しいビートに合わせ、3人の体と両手のライトが動き始めた。リズミカルで規則的な動き、ライトが描く光の軌跡に「すごい」「きれい」と声が上がる。
 3人は「オタ芸」のグループ「River Stone」(通称リバスト)のメンバー。重要な初詣前の開門イベントに招いた副住職の木崎馨雄(けいゆう)さん(48)は「お寺では昔から祭りや芸能ごとをやっていた。オタ芸を見せてもらったらクオリティーが高かった」と話す。
 リバストには、石川県を中心とした高校生から23歳までの約15人が所属している。リーダーの西村琉吾さん(20)は会社員だ。
 オタ芸との出会いは高校1年のとき。オタ芸が趣味の友人の動画を見て、「火を振り回してるみたい。すごい」。水泳やカヌーの経験があり、高校では弓道部に所属。ダンスをしたことはなかったが、「自分にもできそう」と思った。
 やってみると難しい。動きが大きな分、ライトがずれるとすぐ分かる。疲労も想像以上。ただ、「体の使い方で光の軌道の描き方に個性が出るのが面白い」と夢中になった。
 仲間を募り、高校で自称「オタ芸部」を立ち上げた。ネットで、東京や大阪で活動する先駆者たちの動画をスローモーションにして研究し、近所の公園で練習を重ねた。2年のときは文化祭のステージに上がり、全校生徒約700人を前に披露した。アイドルやアニメのオタクをしたことはなかったが、すっかり「オタ芸オタク」になっていた。
 卒業後、動画サイトで見ていた人たちの芸を東京で見る機会があり、レベルの差にがくぜんとした。「このまま石川の田舎でやっている人で終わるのは嫌だ」
 県内でオタ芸をやっている人を集めてもっとうまくなろうと、ツイッターで仲間を募った。19年5月、かつてのオタ芸部のメンバーも合わせ、リバストを結成した。