ライチョウ家族 初の屋外にビクビク警戒 那須どうぶつ王国

あさん被新聞社

朝日新聞デジタル

中央アルプス(長野県)から那須どうぶつ王国(栃木県那須町)に来た野生のライチョウ家族が1日、初めて屋外の放飼場に出た。新しい環境に母鳥が警戒して何度も鳴き声をあげ、そのたびにヒナ6羽が小さな鳴き声で返答して自分の位置を知らせていた。
 1日朝。標高約750メートルの同園周辺は気温が14度まで下がった。7羽はヘリコプターでやってきた8月3日から31日まで、ずっと屋内施設で過ごした。エサをよく食べ、102~152グラムだったヒナの体重は8月下旬、300~372グラムに増えたという。
 屋外放飼場は屋内の10倍の広さ。動転して飛び回り事故が起きないか、飼育員ら4人が見守った。屋外に続く小さな扉を開けると、ヒナが1羽、また1羽と屋外に出た。だが、警戒した母鳥が外に出ないので、ヒナもすぐに戻ってしまった。
 獣医師の原藤芽衣さんが好物の虫餌の器を手に屋外に誘い、ようやく母鳥も出てきた。母鳥はすぐに岩の上に立ち、首を伸ばして警戒態勢をとった。
 30分後。佐藤哲也園長が「何を食べている?」と聞くと、原藤さんは「まさかのヤナギタデです」。屋内では摘んできたものを与えても見向きもしなかった。地面に生えているタデの花をつついていた。地面をはうように伸びたヤハズソウもつついている。
 休みだった飼育員の橋本渚さんも、作業を見に来た。外から金網越しに放飼場内の様子に目を凝らし、7羽を驚かせないように声を潜め、雨が本降りになっても傘は差さない。見かねた佐藤園長は「ゆっくり傘を差していいよ。ゆっくりね」と声をかけた。
 その時、立ち会っていた広報担当の宮地さくらさんが、母鳥が「クゥクゥピピピピーッ」と高い声を発したのを目撃した。ヒナ6羽は直ちに松の枝の下へ走った。うずくまって動かず、鳴き声も発しない。数分経過して母鳥が「クックー」と小さく鳴くと、ヒナたちも「クックー」と返した。
 みんなが傘を閉じて、しばらくすると、ヒナが動き出した。佐藤園長は「傘の大きさと、それが動くので、天敵の猛禽(もうきん)に見えたのだろう」と推し量った。
 その後も、母鳥が警戒の声を発するたびに、ヒナたちは急いで近くの岩陰などに隠れた。佐藤園長は「山では警戒しなければすぐ事故に遭う。これで山に戻せるライチョウになる」。初日は3時間半ほど屋外で過ごした。
 今後も天気や気温を見ながら、できるだけ日中は屋外の放飼場にライチョウたちを出すという。