とろとろのタマネギ、パンにのせて 追われた故郷思うパレスチナの味

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鶏肉や羊肉を煮込み、スパイスで炊いたご飯と一緒にいただく。パレスチナには、食欲をそそるおいしい料理がたくさんある。ただ、煮たり揚げたり、作るのに数時間かかることも。主に家庭で食事作りを担う女性たちはどれほど大変なのだろうと思っていた。そんな中でも、いつでも手に入る材料で、比較的簡単にできるパレスチナ料理があると聞いた。鶏肉とタマネギを薄い生地のパンに載せてオーブンで焼き上げる、「ムサッハン」だ。
 ヨルダン川西岸地区のラマラ郊外にある、有名な料理店「アルファッラーハ」に向かった。主なメニューはムサッハンだという。
 キッチンで調理の様子を見せてもらった。
 まずはタマネギを刻み、たっぷりのオリーブオイルで煮る。次は、オーブンの呼び名と同じ「タブーン」と呼ばれるパンの準備だ。オーブンの中の小石の上に直接、パン生地を並べていく。石の形に添って、でこぼこと表面がふくれ、焦げ目がついたパンが焼き上がった。表面に形を付けることで、やわらかく焼き上がるのだという。
 ムサッハンに欠かせないのが、中東で広く用いられる赤紫色の香辛料「スマック」。木の実を砕いたもので、酸味が特徴だ。鶏肉はレモン汁につけた後、塩やスマックなどのスパイスをかけてオーブンで焼き上げた。
 最後は、オリーブオイルに浸したパンに、くたくたになったタマネギをたっぷり広げ、またしてもスマックをかけてから、焼いた鶏肉を載せる。さらに鶏肉の上にもタマネギとスマックを重ね、彩りにナッツを添え、オーブンに入れること数分で完成した。
 ムサッハンを初めて食べる前、パレスチナ人の知人らからは「ムサッハンの主役はタマネギだ」と聞いていた。ただ、肉好きの私。「いやいや、主役は鶏肉でしょう」と内心思っていた。
 だが、食べるとその意味がわかった。