「いじめを科学的に捉えて解決へ」荻上チキ

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いじめ問題の解決に向けて提言活動をしている評論家の荻上チキさん。問題解決のため必要なことは何なのか。話を聞きました。
■加害者と被害者が入れ替わる現実
子どもたちもいじめがいけないことはとっくに知っている。いじめをいけないと伝えることがいじめ対策のゴールではなくて、いじめが起きやすいような環境を改善すること。例えば世の中にいじめっ子がいて、いじめられっ子がいて、被害者と加害者の力関係が強烈に存在するイメージがある。ジャイアンとのび太とかですね。
でも、実は日本のいじめについて研究をすると、9割近くの方がある時期はいじめ被害を経験して、9割近くの方がある時期はいじめ加害を経験する。その立場がどんどん入れ替わっていく。つまり人はその人の心理だけではなくて、環境によってどんな行動をとるのかというのが変わるんです。
■どのような環境でいじめは起こる?
僕はいじめが起きやすい教室のことを「不機嫌な教室」と呼んで、いじめが起きにくい教室のことを「ご機嫌な教室」と呼んでいる。
いくつかの項目が「不機嫌な教室」を作っている。例えば校則が厳しいとか、あるいは先生の指導が理不尽であるというものも含まれている。わかりやすいところで言うと、“連帯責任”という謎の儀式がありますよね。この連帯責任を先生が行う教室だといじめが多く起きるんです。
ひとつは連帯責任という理不尽な行為によるストレスもありますし、連帯責任によって逸脱をした人というものは攻撃しなくてはいけないというゲームを教室の中に作ってしまう。そうしたようなことが重なって「不機嫌な教室」の要因を作り、それが子どもたちのいじめを増やしてしまう関係にある。
■そのような環境はなぜ生まれてしまう?
ひとつは先生が多忙なこと。こうした環境をパーフェクトにやろうとするならば、かなりの時間とマンパワーが必要。でも、現場では先生の数は増えていないどころか、仕事量は増えている。睡眠時間が減っている。そうした中では生徒ひとりひとりと向き合う時間がむしろ減少してしまっている。そうした先生の働き方を見直さなければ、先生の指導方法も見直すことも難しい。ここはひとつの大きなポイントだと思います。
■環境を改善するのに大切な視点は?
一言でいうといじめに対する考え方をアップデートしていただきたい。いじめが大きく取り上げられる時というのは、特定のいじめ自殺事件が注目された時に、多くのメディアはわっと飛びついてその一件の事件を取り上げる。
でも、いじめ報道のブームが起きるタイミングというのは、データ的に特にいじめが増えた時期というわけではない。その時に多くの人たちが、「今のいじめはなんとなく大変になっている」「昔よりひどくなっている」「何か対策をしなきゃ」――そうすると非科学的で当てずっぽうな対策というものが何となくその世論の感情で進んでいってしまう。
せっかくいろんな研究によってわかった事実があるので、そうした事実を部分的に共有するだけでもちょっとした対応というのは変わってくる。いろいろな議論について根拠立てて参加をするというようなクセを身に付けてほしいと思う。